着物の達人講座

『着物の達人講座』 五 「誰も教えてくれない着物の着こなし」 

 着物、ましてや男の着物について本当のことを誰に聞いても答えられないのは無理からぬことである。

 今では女性でも自分で着物を着る事すら出来ない人が多く、自分で着るには「着付け教室」に通わなくてはならないのが現状である。しかし、その着付教室でも着物の着付けについては教えてくれても、着物の着こなしについて教えてくれる所は少ない。ましてや男の着物の着こなしについては殆ど判らない。そもそも残念ながら男性のための着付教室も皆無に等しい。

 女性の着付け教室も、教材と称するマニュアルを買って、そのマニュアル通りに着付ければ一応形にはなる。

 着付けた時には雑誌に出ているモデルさんのように、きれいな形が出来上がっている。が、しかし着物を着てもモデルさんのようにじっと立っている訳にはいいかない。乗り物に乗ったり、食事をしたり、お手洗いに行ったり様々な動きをする。かなり無理をしてきっちりと着付けるため、ゆとりが無く動く度に引っ張られて着崩れてしまう。筆者もモデル時代カメラ前で一時間も二時間もじっと動かないで立っていたことがある。

 ましてやあちこちに補正のタオルや、綿などを入れた着付けは着崩れてしまうと直す事が難しい。特に男性の着物は帯一本で着ているので補正をすると着崩れしやすい。

 着物の達人になるにはとにかく着る事が一番であるが、それもただ漫然と着るのではなく「なぜ」「どうしたら?」等と疑問を持ちながらひたすら着物を着るとだんだんとコツが解ってくる。

 着物を着た時の手の上げ下ろし、歩き方など、一挙手一投足全てに何故そうするのかという訳がある。その訳を知る事が「着物の達人」への最短の道である。

 着物の「物」(生地や織、染めなどの品物としての着物)についての知識よりとにかく「着る」事である。男性も女性も細かい事にとらわれず、とにかく一度でも多く着る事である。

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